YUUKI150321590I9A4002_TP_V
 構音障害 こうおんしょうがい とは、 同じ文化圏、言語圏で使用されている言語音を、同じ発達年齢の人とおなじように発音できない状態をいいます。 言語聴覚士の領域では、発音のことを「構音」、発音の問題のことを「構音障害」と呼んでいます。
 構音障害には、以下のような分類があります。

  ・運動障害性構音障害
  ・器質性構音障害
  ・聴覚性構音障害
  ・機能性構音障害


運動障害性構音障害
 運動麻痺や神経疾患などによるものは「運動障害性構音障害」です。くちびる、舌、歯、声帯といった、発音をする身体の器官(発声発語器官と表現します。)が思うように動かないことで、発音が歪(ひず)みます。原因には、脳卒中、パーキンソン病、変性疾患、脳性麻痺などがあります。
器質性構音障害
 発声発語器官の形態が異なるために適切な発音ができない状態を「器質性構音障害」といいます。原因には、舌小帯短縮症、口唇口蓋裂、舌切除や声帯摘出などの外科的手術などがあります。
聴覚性構音障害
 難聴によって聞こえてくる音が歪(ひず)んでいる場合、発音が歪(ひず)むことがあり、それを「聴覚性構音障害」と呼びます。
機能性構音障害
 そして、これまで挙げたような特定の原因が無いにもかかわらず、発音が誤っていたり歪(ひず)んでいたりする場合、これを「機能性構音障害」といいます。今回は、この機能性構音障害についてお話します。

構音はどうやって発達するの?

 当然ですがわたしたちは、生まれながらに完成した発音をもっているわけではありません。「オギャーッ」という産声から始まり、次第に快いときの声・不快なときの声を出しわけられるようになります。喃語(なんご)と呼ばれる時期に母国語の発音の土台をつくっていきます。
 はじめてのことば(初語)が出るのが、おおよそ1歳過ぎといわれますが、そのときにはまだ発音は未完成です。運動の発達やことばの発達に順番があるように、発音の発達にも順番があることがわかっています。
 ア、イ、ウ、エ、オの母音、くちびるの音であるマ行、パ行、バ行などから獲得が始まります。動きの方向や流れが単純なものから、より動きが複雑なものへと発音は発達していきます。

  <発音獲得のめやす>  ※個人差があり、実際とは異なる場合があります
2~3歳頃 ア・イ・ウ・エ・オ、タ・テ・ト、パ行、マ行、ヤ行、ン
2~5歳頃 バ行
3~4歳頃 カ行、ガ行、ナ行、チ、チャ行、ダ・デ・ド、ハ行、ワ
4~6歳頃 サ行、ザ行、ツ、ラ行


うちの子、構音障害かも?

 もしお子さんが周囲の子とくらべて発音がおかしいと感じる場合、機能性構音障害の可能性があります。サ行やガ行など比較的難しいとされる音で、誤りが多くみられます。別の音に変わっている場合(置換)、あるいはそれに近い音にゆがんできこえる場合(歪み)、特定の音が出ていない場合(脱落)などの症状があれば、構音障害にあてはまります。

   例)カ行とサ行に置換の誤りがある機能性構音障害のお子さん

     「きのう、おかあさんと かいもの いったんだよ」

      → 「ちのう、おたあたんと たいもの いったんだよ」


 成長とともに自然によくなる場合もありますが、発音の間違いがいつも一貫しており、言い直しをさせても正しい発音が導けない場合には、専門家のもとでの練習が必要です。
 たとえ発音が不明瞭であってもコミュニケーションは取れますし、それくらいのこと、と思うかもしれません。ですが、お子さんにとっては発音が上手くいかないことで、周囲とのコミュニケーションが上手くいかず、自信をなくしてしまうこともあります。また、発音の問題の裏には、土台となることばの発達の課題が隠れていることもあります。


  


よくなるの?

 合併症やその他の問題がみられず、ただ発音の問題だけ、という場合、機能性構音障害は適切な指導のもとで練習を行えば正しい発音を身に付けられるようになります。言語聴覚士などの専門家のもとで、週1回~ほどの定期的な練習を続けることで、3か月から1年程度で正しい発音が身に付きます。

相談する時期のめやすは?

 個人差はありますが、母国語の発音が一通り完成するのが、おおよそ6歳頃といわれています。
学年でいうと、年長さんの春から夏にかけて以降に発音の課題が残っていれば、ことばの訓練の対象となることが多いため、専門家への相談をおすすめします。逆に、それよりもはやい時期に発音の課題を取り上げてしまうと、土台となることばの発達全体に悪影響を与えてしまったり、お子さんに過度なプレッシャーやストレスを与えてしまうため注意が必要です。訓練の必要性や適応については専門家の助言があるとよいでしょう。

 

どこに相談すればいいの?

 まずは保健所や発達センターなど行政が運営していることばや発達について相談のできる機関が窓口となってくれることが多いです。言語聴覚士の助言をもらえる地域の施設を紹介してくれることがあります。通っている保育園や幼稚園、学校の先生に相談してみるのもよいでしょう。学校によっては、学内に「ことばの教室」といい、同じような悩みを持ったお子さんをみてもらえる教室を設けている場合もあります。学校内のことばの教室の場合、国家資格を持った言語聴覚士ではないことも多いですが、発音の練習について経験からコツをご存じの先生も多いです。


 

さいごに ‐ 発音を育むかかわり

 おとなにとっては当たり前のようにできてしまう母国語の発音、お子さんにとっては(そのほかのことがみんなそうであるように)初めての連続です。発達に一定のめやすはありますが、あまり囚われすぎないことも重要です。特に、周囲のおとなが発音を気にしすぎると、お子さんがコミュニケーション自体に苦手感を持ってしまうこともあります。とくに練習に取り組んでいるあいだは、「普段の会話のなかでは発音を直さない」、「できたときにしっかり褒める」のかかわりが重要です。
 また、泣く、笑う、鼻や口で呼吸をする、吹く、吸う、息をこらえる、食事を噛んで食べる、なめる、といった話すことと直接関係のない行為にも、発声発語器官を使っています。年齢がまだ幼い場合には、発音の前にこういったことから取り組んだほうがよい場合もあるでしょう。
 そのほか、発音の練習を開始する時期のめやすに「しりとり」や「さかさまことば」ができる、というものがあります。「あひる」ということばは、3つの音でできていて、あたまの音は「あ」で、まんなかが「ひ」、おしりが「る」、さかさまからいうと「るひあ」。――― お子さんがこういったことを意識しはじめるのが、おおよそ4歳前後の時期だといわれています。ことばを構成する音についての意識が育っていない段階では、発音の練習をしても効果は思うようにあがらないでしょう。ことばをつくる音への意識を向け、その不思議に気づきが出てくるのを待ちましょう。


 いずれにしても、お子さんひとりひとりに合ったかかわりが大切です。