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 言語発達障害は、言語聴覚士が「小児」の領域でかかわる障害です。
まずは定義から確認していきましょう。

言語発達障害 (げんごはったつしょうがい)とは

「言語発達障害」の定義

 言語発達障害とは、その年齢(生活年齢)で期待される水準にことばの発達が満たないことにより、日常生活に支障をきたしている状態をさします。さまざまな原因によりことばが遅れている状態をさしますので、「自閉症スペクトラム」や「ダウン症」といった、医学的な診断名ではありません。
 また、ことばが遅れている、統計的な水準とくらべて遅い・ゆっくりという事実だけでは障害とはされません。かならず、日常の生活、コミュニケーションに支障をきたしているか、という観点をもって「言語発達障害」かどうかを判断します。支障をきたしている、というのは簡単には「困っているかどうか」ですが、本人が困っている場合、本人が困っていなくとも周囲の人がコミュニケーションが取れなくて困っているなどの状態も含まれます。
 反対に、困っているからといって即、言語発達障害であると決めつけることもできません。ことばの力が同じ年齢の子どもにくらべて遅れがあるかという視点が必ず必要です。ことばはコミュニケーションや情報の伝達、思考のための道具です。ことば・コミュニケーションを使用する社会と密接な関わりがあります。どのような時代、どのような社会に生きるかによっても、必要なことばの力は変わってくるでしょう。

ことばが遅れる原因

 ことばが遅れる原因はさまざまです。主要なものには、以下があります。

聴覚障害

 難聴や聾(ろう)など、聞こえの障害によって、ことばの発達が遅れることがあります。子どもははじめ、主に耳からことばを覚えるためです。聞こえにハンディがあると、ことばと意味の結びつき、母国語の音をとらえる力などが障害されます。どの程度遅れるかは、聞こえの程度やその状態(低い音が聞こえにくいか、高い音が聞こえにくいか、中枢性・感音性の聴覚障害か、外耳や中耳由来の伝音性の聴覚障害か)によってさまざまです。
 近年は、生後まもなくの検診で聞こえのスクリーニング検査を取り入れる自治体が増え、乳幼児の時期に聴覚障害が発見されることが増えています。そのため、早期から補聴器や人工内耳といった聞こえを補う選択肢が増えてきています。同時に、聞いてことばを理解する力をつける訓練(聴能訓練)や発音の訓練も求められています。

自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)による言語発達障害

 略称と英語表記は以下の通りです。
自閉症スペクトラム
ASD; Autistic Spectrum Disorders
広汎性発達障害
PDD; Pervasive Developmental Disorders
 自閉症スペクトラム(ASD)といわれる方の症状のひとつである「社会性の障害」から、ことばの遅れ・コミュニケーションの遅れ、コミュニケーションの質的な側面の特性をみとめることがあります。自閉症スペクトラム、広汎性発達障害を疑われる・診断を受けるお子さんの多くは、1歳半を過ぎても初語が出ない、語が増えない、呼びかけに応じないなど、ことばの遅れにより発見されます。また、アスペルガー症候群や高機能自閉症と呼ばれる「知的な遅れのない自閉症」の場合、語彙の力や文を理解したり話したりする力が年齢(生活年齢)の水準にあるものの、やり取りをする力が弱いことから診断を受けます。この、やり取りをする力のことを、「コミュニケーションの質的側面」といいます。

知的障害による言語発達障害

 知的障害とは、あきらかに平均を下回る知的機能であり、そのために年齢で期待される適応の力が不足している状態のことをいいます。たいてい、知能検査により知能指数(IQ)をはかり、70以下のIQであれば知的障害とされます。
 知的障害の原因にはさまざまなものがあります。代表的なものには「ダウン症」がありますが、そのほかにも先天性の代謝異常や脳の形成異常などがあります。また、出産の前後に感染症にり患したこと、出生後に脳炎にかかったことなど、さまざまな原因により生じます。なかには現在の医療では原因がわからない知的障害の方も多くいます。
 知的障害では学習面だけでなく、自己管理や活動などの生活の面、ことばやコミュニケーションの面に不適応があることがわかっています。

特異的言語発達障害

 特異的言語発達障害 SLI;Specific Language Impairment とは、 知的障害、自閉症スペクトラム、聴覚障害など、ことばの発達を阻害するあきらかな要因がないにもかかわらず、ことばの発達が遅れている状態です。ことばを聞いて理解すること、話すことに障害をみとめます。このあとの説明で東条おする、学習障害(LD)を併発することや、特異的言語発達障害から学習障害へと移行するお子さんが多いことがわかっています。

学習障害

 学習障害 LD; Learning Disabilitiesとは、知的障害などに依らない学習の困難さを持つ障害です。学習には、聞く、話す、読む、核、計算する、推論するなどの能力があり、そのうちどれかひとつ特定のものが苦手(読むのが苦手)な場合に、学習障害を疑われます。
話し言葉の障害
特異的言語発達遅滞 SLI;Specific Language Impairmentに分類されます。
書き言葉の障害
発達性読み書き障害、ディスレクシア(Dyslexia)と呼ばれる障害です。

発声発語器官の運動能力の障害(運動障害性構音障害)

 脳性麻痺などにより、発声発語器官(声やことばをつくる音をつくる身体の器官をまとめてこう呼びます)の運動に障害があると、主に話しことばの発達に遅れをみとめます。発声発語器官の動きが障害されていることにより、話しことばの音が上手く作れない状態を、運動障害性構音障害といいます。  脳性麻痺の方の多くは、知的障害も併発しますが、知的障害によることばの遅れは「知的障害」の項目ですでに述べた通り、ことばを理解する力、表現する力の双方に影響を与えます。
 そのほかの話しことばの障害には、機能性構音障害、口唇口蓋裂のような器質性構音障害、吃音、発達性発語失行などがあります。

そのほか、ことばを使用する環境の影響

 子どもはひとりでに言語を覚えるのではなく、周囲で話される言語を学習することがわかっています。そのため、稀な例ではありますが、育児放棄など極端にことばや対人コミュニケーションの少ない環境では言語発達に遅れをみとめることがあります。また、言語発達の時期に言語環境が単一ではない、いわゆるバイリンガルの場合にもことばの遅れを認めるケースがあります。

ことばの発達は、持っている力と環境の相互作用

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 ここまで、言語発達障害を起こす要因のうち主なものを挙げてきました。実際には、子ども本人が持つ力と環境の相互作用によって、ことばは発達していきます。一次的な要因(自閉症スペクトラム、知的障害など)を明らかにしたうえで、周囲の大人をはじめとする人たちがどうかかわっていくのか、その子本人を取り巻く言語環境をどう整えて、最大限力を引き出してあげるかが大切です。