ご無沙汰しております。
久しぶりの更新になります。
今回は、こちらの話題について考えてみようと思います。

ガリガリくんなら食べられる気がする


Twitterで、こんなツイートが話題になっているのをみかけました。


なんでも、がんなどの進行性の病気により食欲不振となった患者さんが、 共通して食べたいと訴える食べ物が、あの「ガリガリくん」なのだそう。
このツイートの内容に共感、同じような経験をされたという方の声も、次々と寄せられています。



そのほかにも、同じような声が多く、まとめられています。

どうしてガリガリくんだったのか


多くの人が同じような体験をなさっていたことに驚きましたが、ではなぜガリガリくんだったのでしょうか。

ガリガリくんは食べやすい?

  • 冷たい
  • 軽い力で口に取り込める
  • 甘い
  • 水分量が多い
  • 安い
  • すぐに溶ける
  • 味があっさりしている
ざっと思いつく、ガリガリくんの特徴はこんな感じでしょうか。
あとは、いろんな味が楽しめるとか、子供のころに食べた思い出の味であるとか、コンビニなどどこにでも売っていてすぐに手に入りやすいとか、いろいろあると思います。
特に終末期のがんの方で食が細っており、固形のものをなかなか受け付けない、という方にとっては喉通りがよくすっとするガリガリくんであれば食べられる、ということがあってもおかしくはないと思います。

ガリガリくんは嚥下障害の人にとって…

それでは、ガリガリくんを「嚥下障害」から考えた場合、はたして適したたべものであるといえそうでしょうか。
なかには適していない人もいると思いますが、それはどのような人でしょうか。

嚥下障害とは

その前に、「嚥下障害」とはなにか、おさらいをしておきましょう。
嚥下障害とは、病気や加齢が原因で、水や食べ物が飲み込みづらくなることをいいます。
原因となる病気はさまざまですが、咀嚼や飲み込みに使う顔面・舌・喉頭(こうとう)の筋肉やその筋肉に指令を出す脳神経系が直接障害される脳卒中や変性疾患などの神経系の病気で起こりやすいとされます。
また、さまざまな病気による体力・筋力低下や感覚の鈍麻などでも起こり、高齢者にとっては身近な病気といえます。
社会の高齢化に伴い、近年では一般にもかなり認知度が上がってきました。
嚥下を失敗し、気管や肺へと流れ込むことを「誤嚥(ごえん)」といい、さらに食べ物・飲み物や唾液などに含まれる菌が肺のほうに流れ込み炎症を起こす状態を「誤嚥性肺炎」と呼びます。
この誤嚥性肺炎は繰り返し起こしやすく、直接の死亡原因ともなりやすいため、嚥下障害の治療が重要だといわれています。

今回のツイートの内容では、直接の飲み込みの能力とは別にして、食欲不振という問題を抱えています。(実際には、病気などで体力が落ちると嚥下自体の力も低下します。)
この食欲不振や、そのほかには認知症などで食べ物を食べ物と認識できないなどの状態(先行期・認知期の障害と呼びます。)も広義の嚥下障害ととらえることができ、その場合には「摂食嚥下障害」と、やや広いことばを使います。

「ガリガリくんなら食べられる」をすべての人に当てはめるのは危険!

さて、本題です。
嚥下障害を引き起こすと、誤嚥、ひいては誤嚥性肺炎はもっとも気を付けていかなければいけないリスクです。
一般にはまだそんなに知られていませんが、嚥下障害の方が食べにくいものとして、水や水分が多い食べ物(飲み物)は必ず筆頭にあがります。
なぜなら、水はさらさらしていてのどに流れ込むのが早く、気管に入らないようにせき止める機構がはたらくよりも前に、するすると流れ込んでしまうためです。これを、早期咽頭流入と呼んでいます。
ガリガリくんのように、はじめは固形物でも、すぐに口の中で溶けて少しずつ液体となり、のどに流れ込んでいくものは、飲み込みの反射(ごっくん・「嚥下反射」という)が起こっていないタイミングでだらだらと気管の入り口付近に流れていくでしょう。
これはともすれば、誤嚥につながります。
健康な人であれば、気管へ入りそうになった瞬間に、ごほごほと「むせ」が起こります。
しかし、体力の低下してむせる力の無い人や、のどの感覚が鈍麻している人、たんや分泌物などでのどが覆われていて、流れ込んだ感覚を感じにくい人の場合、「むせ」という安全装置が働かずに誤嚥してしまうこともあります。(不顕性誤嚥といいます。)
これらの危険性やリスクを知っておく必要があります。

ただし、適した点もある

では、ガリガリくんはなんらかの嚥下障害を抱える人にとってはまったく適さないのでしょうか。
そんなことはありません。
先に挙げた特徴では、
①冷たい → 口やのどの中の体温との差が大きく、刺激量が多く身体が反応しやすい。
       覚醒が上がり、反射が起こりやすくなる。
②甘い  → 冷たい、と同様に甘い味を味わうことで、刺激を受け止められる。
③食感  → 軽い力で口に取り込め、すぐに溶けるので咀嚼や舌の力をあまり必要としない。

のような、利点があります。
また、さきほどのとおり食欲不振の方にとっては、ソーダアイスならではの清涼感など、満足感に繋がるでしょう。

今回の話題のケースだと、がん患者の方で嚥下にかかわる直接の運動の障害などはない(飲み込み自体の直接の障害ではない)、食べたいものが浮かばなくなるほどに食欲が減衰している、という状況から選択されたものと思われます。
しかし、これを飲み込みの困難のある人にそのまま当てはめるのは大変に危険、ということも同時に理解しておくべきといえます。
ただし、リスクはあるとはいえど、そのリスクを勘案した上でも食べることで得られるメリット(享受できる喜び)が大きいという場合には、その限りではないでしょう。
食べる楽しみ、というのは生きる上ではかけがえなく、非常に大切なものです。
何が正解か、簡単に決められるものではありません。

まとめると、以下のようになります。
  • 水分は、のどに流れ込むのがはやく、むせや誤嚥を起こしやすい
  • 水分でむせ、誤嚥のリスクのある嚥下障害の方には要注意
  • 逆に、飲み込むことそれ自体の障害(咽頭期の障害)の無い方にとってはよい
  • リスクがある場合にも、食べる楽しみを優先するという状況もある
garigarikun-th-01


追記)
アイスの、冷たい刺激・甘い刺激、柔らかいという特徴を持ち、咽頭への流れ込みを防ぐように作られた、嚥下障害の人でも食べられる「溶けないアイス」というものが販売されています。
リスクは怖いけれど、アイスが食べたい、、、という嚥下障害の方には、こんなものをご紹介するのはいかがでしょうか。
(注意!主治医や担当の言語聴覚士とご相談の上、お試しください)